Last Updated: 2010.01.26

チベット側と中国側の第9回目の対話が再開する

ブログをやめていたが、明日よりチベット側と中国統一戦線部との対話が再開するようなので、このブログも必要なことだけ書くことにした。

http://www.dalailama.com/news/post/484-press-statement

国際問題としてチベット問題をとらえるという考え方があるが、それは実は妥当ではない。

前回の会談の席で提出された以下の文章によれば、チベット側はあくまでも中国の憲法のなかでの法的な裏付けのある自治の行使を求めている。

上記の二つの文章は私がボランティアでチベット語からお寺のゲシェーたちに細かいニュアンスなどを確認しながら翻訳したものである。

これから数日間さまざまな報道があるであろうし、この報道をする前に日本のチベット語を解さない無知な日本の報道メディア方々はネットで検索して、いろいろ情報を仕入れるだろうから、偶然にでもここに情報を見に来てくれたメディアの人々にいっておきたいことがある。

「高度な自治」という表現について

この二つの翻訳では「高度な自治」という表現はない。何故ならば、それにあたるチベット語の原文、つまり彼らの主張は「名実を共にする自治」であるからである。英語では「genuine autonomy」と表現されているが、このgenuineを「高度な」と表現したのでは何も意味が通じない。そもそも高度かどうかというような話ではない。

最近にわかチベット問題通みたいな輩が多いが、チベットのことを報道しようとするのならば、少なくともチベット語をすこし勉強した方がいいと思う。今回も行った特使に直接お話を伺ったが、彼らはチベット語で対話をしているのであって英語や中国語で対話をしているのではない。

「チベット人のアイデンティティ」という表現

彼らが現在争点としている「チベット人のアイデンティティ」というのは、自己同一性ではなく、むしろチベット民族というのが単体の集合であるので、それを単体で自治行政府および自治区を作るべきであるということである。彼らが現在問題としてるのは、“民族融合政策”ではなく、彼らを単一の民族として扱って単一の自治区として定めてないことにほかならない。彼らは自分たちが「チベット族」として連続した地域に住んでるのであれば、その地域を一つのチベット自治区にすべきであると語っているのである。

何故ダライ・ラマ法王の特使が対話をしているのかということ

チベット亡命政府とダライ・ラマ法王を同一視している人が多くいるが、これは違う。何故ダライ・ラマ法王の特使が統一戦線部と対話をしているのかといえば、それはチベット側としてはそれはチベット人すべての総意であり、チベット人すべての総意として、対話の全権をダライ・ラマ法王へ委嘱しているからなのであって、ダライ・ラマ法王がチベット亡命政府の代表者なのではない。チベット亡命政府の代表者は現在首席大臣のサムドン・リンポチェ教授である。(「リンポチェ大臣」などと書くメディアはあまりにもばかばかしくてお話にならない)

この3点はよく間違って理解しているとしか思えない記事の書き方があるので、まずはここからちゃんと報道してほしいものだ。