Last Updated: 2011.01.07

新しく美しいメディアに

電子ブックの開発に取り憑かれている。未だにこのメディアで何らかの新しい世界への招待状を外部に送ることができないが、少しずつやりたいことが具体的に見えてきた。今年はまた新たなはじまりの年にしたい。

やりたいこと、読みたいもの、聞きたい音、それらは最初からある程度決まっているが、ようやくそれらにふさわしいリアリゼーションの方法がいくつか分かってきた。

私は権威主義者を憎みほんとうの人間のことばを聴きたかった。だからこういうメディアを学術書の発表の場にのみしてやろうという気は毛頭ない。もちろん学術書や研究論文というものはすべて紙ではないものになるべきであると思う。

このメディアはWebと同じことができるが、Webとの違い、それは見るもの、そして読むものがフォーカスされていることであろう。それは人の手仕事のようなサイズであり、これらの小さなデバイスのなかに入り込んで我々はことばを新たにこれまでとは別のありようで咀嚼できるのである。

これまでのようにインク臭い大きなスペースは不要である。図書館の書庫の中で巨大な情報量に自分の小ささやくだらなさを隠蔽する必要はない。もはや雑沓のなかで大きな声で叫ぶ必要はない。それはまるで手で一文字ずつ書かれた恋人に向けた恋文のようにプライベートなものなのである。

空虚なことばで塗り固められたサイトの嵐のなかで、ゆさぶられながら存在することは必要はなくなるだろう。自らのものに対する愛着が原因で収集された書物を整理するために書棚を買ったりしなくていいのは絶対的にいいことである。何故ならばたとえ明日死ぬことがあっても残された人が大量に資源ゴミとして美しいことばや思索に息をふきかけるものを名残惜しみながら捨てなくていいからである。

人間には持って歩けないものも必要であるが持って歩けるものはほんの少ししかない。そんな限られた人生にふさわしいメディアが電子ブックであると思う。